登山に役立つ話(42)「鳥海山のこと、その3」
鳥海山の植物について
*「基準標本」のこと
ある植物の命名の基準になった標本のことを「基準標本」といい、これはすべての高等植物が持ちます。植物の『同定』とは、この「基準標本」との異同を決定することです。日本の植物の「基準標本」の約半分は欧米にありますから、日本の植物学者たちは、努力して「参考標本」もこしらえました。知らない植物の名をたしかめるときは、植物図鑑、「参考標本」に当たればいいわけです。
*鳥海山の
「基準標本」たち
高山植物には、分布上では「日本固有」が多くなります。鳥海山を「基準標本」とする高山植物を調べてみました。
ミヤマウスユキソウ(キク科ウスユキソウ属)、ウゴアザミ(キク科アザミ属)、チョウカイアザミ(キク科アザミ属)、オクキタアザミ(キク科トウヒレン属)、ヒナザクラ(サクラソウ科サクラソウ属)、ハクサンフウロ(フウロソウ科フウロソウ属)、タカネザクラ=ミネザクラ(バラ科サクラ属)、チョウカイフスマ)ナデシコ科ノミノツヅリ属)、タカネスズメノヒエ(イグサ科スズメノヤリ属)、オオヒカゲガリヤス(イネ科ノガリヤス属)などが上げられています。
県版「レッドデータブック」によれば、これらの多くが「絶滅危惧種」、「準絶滅危惧種」にいれられ、それらの生存への脅威として、分布局限、踏みつけ、道路工事、火山噴火、園芸採取などをあげています。今後は、地球温暖化、他域植物の侵入なども考えなくてはなりません。
*鳥海山のヒナザクラは、
「日本植物学
独立宣言」の金字塔
初代日本(東京)植物学会会長谷田部良吉(1851~1899)は、一八九〇年(明二三)、英文論文を発表して、「日本人自らが植物の新種に学名をつける」と宣言し、鳥海山のヒナザクラを発表しました。
これは、鳥海山にとっても、ヒナザクラにとってもたいへん名誉なことでした。わずか百二十年ほど前の日本の植物学の様子が知られ、感慨無量なものがありますね。


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