登山に役立つ話(40)「鳥海山のこと」
① 鳥海山の「偽高山帯」
悪天候のために、十月の月例登山鳥海山は中止でした。その悔しさもこめながら、鳥海山について、三回にわたって書きます。
* 山の植生帯のこと
山の植物の垂直分布は、低い所から頂上部にかけて、山地帯、亜高山帯、高山帯などと呼ばれます。ブナ、ミズナラ、コナラなどの落葉広葉樹林帯が「山地帯」(鳥海山では標高1000mくらい)です。
「亜高山帯」はオオシラビソ、コメツガなどの針葉樹の植生帯を指します。ところが、鳥海山では、この針葉樹林が見られません。かわりに、(1500mあたりまで)ダケカンバ、ミヤマナラ、ナナカマドなどが密生します。
1500mあたりから頂上部までが「高山帯」です。ここでは、尾根部、雪田部などに、ハイマツ、イワウメ、コメバツガザクラ、チョウカイフスマ、イワブクロ、イワギキョウ、ガンコウラン、コケモモなどのお花畑が広がります。
* 「亜高山帯」=「偽高山帯」
鳥海山、月山、朝日連峰、飯豊連峰などの日本海側の多雪山地では、オオシラビソなどの「亜高山帯」=針葉樹林帯が欠如します。そして、景色は高山帯とよく似ているので、「偽高山帯」と呼ばれます。
なぜ、鳥海山などには針葉樹林がないのか、これにはいろいろな説があります。
[梶 幹男説]1982年提出 いま、約1600mくらいのブナの上限が、温暖な縄文時代には、2000mくらいまで上昇した。針葉樹は、ブナにより追い上げられてしまった。やがて、気温が下がり、ブナ林の上限も下がったが、針葉樹は復元せず、偽高山帯が生じた。(ブナ追い上げ説)
[杉田久志説]1991年提出 東北日本の山地ではトウヒ属の針葉樹が繁栄していた。しかし、後氷期の多雪化により、針葉樹林は衰退し、全滅した。四千年ほど前から、オオシラビソなどモミ属の針葉樹が復活してくるが、日本海側多雪地帯では、これも拡大できなかった。(多雪説)
いまは、杉田説が有力です。
なにしろ、鳥海山、谷川岳、白馬岳、立山、白山などの日本海側高山は、中緯度としては世界一の多雪帯、世界一の冬季強風帯ですから、「偽高山帯」のできるのもうなずけます。
なお、鳥海山の支峰稲倉岳(1554m)には、数千本のコメツガ林が確認されていますが、これも不思議なことです。理由は、よく分かりません。


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